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「爺ちゃん・・・・」
隣で「あちゃぁ~」と、楽が額に手を当てる。
「爺ちゃーんっ!サンキューなぁ!俺、半分大人だぜ」
壇上でぴょんぴょんと飛び跳ね、ピースした両手を大きく振り返す颯太に、体育館中がどっと笑いで包まれる。
「おう、颯太っ!誇らしいじゃねぇか!」
そう言って、爺ちゃんは豪快に笑った。
保護者席から漏れ出る微笑ましく笑いあう声に安心したのか、青い顔をしていた教員たちはため息をつきながらも、苦笑いし合った。
颯太と爺ちゃんのお陰でドタバタだった二分の一成人式も無事終わり、颯太はいつもの様に、親友の月城廉、斎藤楽と三人で家路についていた。
廉と楽とは幼稚園からの付き合いで颯太の両親が亡くなって、颯太に対し誰もが腫れものを触るように接したときも、二人だけがいつも通りだった。
周囲の大人たちがそんな廉と楽を見て、「子供だからわからないのね」などと囁く中、爺ちゃんの怒号が響いた。
「てやんでぃ、べらぼうめぃ、ガキはガキなりに理解してるに決まってるじゃねぇか!てめぇらが茶飲み話にどんな話しようが勝手だがなぁ、ガキどもの真剣を馬鹿にすることだけは許さねぇ」
爺ちゃんの言葉を聞いた颯太は、ずっと我慢していた涙が一気に溢れた。大声でわんわん泣く颯太を見て、一緒にいた廉も楽も大声で泣いた。
爺ちゃんは泣きじゃくる三人の子供を両手いっぱいに抱え、よしよしと頭を撫でながら泣きやむまで黙って傍にいてくれたのだ。
「しっかし、颯太の爺ちゃん、ほんと元気だよなぁ」
「まぁな、日本中の元気を集めてジジィにしたのが爺ちゃんだからな」
「えっ、爺ちゃんってそうだったの?」
「ばかだなぁ、楽、本気にするな」
いつも通りの他愛のない話をしながら三人は有閑堂にたどり着いた。
「「「ただいまぁ」」」
三人揃って有閑堂の暖簾を潜り、引き戸をガラガラと開けた颯太に廉も楽も続く。
廉も楽も、両親が共働きだ。
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