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1.理科室の奥
「はい、今日はこれで終わりです。みんな、気をつけて帰るように」
帰りの会が終わって、担任の葉月先生が言った。
「さようならー」
元気にあいさつをして、みんないっせいに帰りの準備をはじめる。
「理紅ちゃん、帰ろっ!」
うしろから、クラスメイトのサクラちゃんが、ぴょこんと顔をだして言った。
「うん!」
わたしは緋山理紅(ひやまりく)。
桜木小学校に通う5年生。
「あれ?」
わたしは机の中をのぞき込んで首をかしげた。
さっき授業で使ったばかりの理科の教科書がなかった。机にも、ランドセルにも入ってない。
今日は理科の宿題があるから、教科書がないと困るんだけどなあ……。
「どうしたの?」
「理科の教科書がないの。さっきまであったんだけど」
わたしが言うと、サクラちゃんの目がキラリと光った。
「それってもしかして、妖精のしわざじゃない?」
「妖精?」
妖精と聞いて、花のまわりをふわふわ飛び回る、小さくてかわいらしいイメージを頭に浮かべた。
でも、妖精が教科書となんの関係があるんだろう?
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