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「さっきまであったものが突然なくなったら、妖精のしわざなんだって。でもね、探しちゃいけないの。もし探してるときに妖精の姿を見かけたら、大きな口で食べられちゃうんだって」
わたしは背すじがぞぞおーっと寒くなった。
かわいらしい妖精のイメージがだいなしだ。
桃井サクラちゃんとは、5年生になってから仲良くなった。
同じクラスに友達がいなくて一人で座っていたら、話しかけてくれたのだ。
2つ結びの髪にふんわりとした薄いピンク色のワンピースがよく似合う、かわいい女の子。
サクラちゃんは、怖い話が大好きだった。
「だ、大丈夫だよ。たぶん、理科室に忘れてきただけだと思うし」
「そう?」
「わたし、理科室に探しに行ってくるね。ごめんね、一緒に帰れなくて」
「うん。じゃあ、また明日ね!」
教室の前でサクラちゃんとわかれて、わたしは理科室に向かった。
階段をのぼって3階にあがったとたん、下校時間のさわがしい声が、ふっと遠くなった。
『もし探してるときに妖精の姿を見かけたら、大きな口で食べられちゃうんだって』
さっきの話を思い出して、わたしは思わず、ぶるっと体をふるわせた。
大丈夫……だよね……?
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