1.理科室の奥

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「さっきまであったものが突然なくなったら、妖精のしわざなんだって。でもね、探しちゃいけないの。もし探してるときに妖精の姿を見かけたら、大きな口で食べられちゃうんだって」 わたしは背すじがぞぞおーっと寒くなった。 かわいらしい妖精のイメージがだいなしだ。 桃井サクラちゃんとは、5年生になってから仲良くなった。 同じクラスに友達がいなくて一人で座っていたら、話しかけてくれたのだ。 2つ結びの髪にふんわりとした薄いピンク色のワンピースがよく似合う、かわいい女の子。 サクラちゃんは、怖い話が大好きだった。 「だ、大丈夫だよ。たぶん、理科室に忘れてきただけだと思うし」 「そう?」 「わたし、理科室に探しに行ってくるね。ごめんね、一緒に帰れなくて」 「うん。じゃあ、また明日ね!」 教室の前でサクラちゃんとわかれて、わたしは理科室に向かった。 階段をのぼって3階にあがったとたん、下校時間のさわがしい声が、ふっと遠くなった。 『もし探してるときに妖精の姿を見かけたら、大きな口で食べられちゃうんだって』 さっきの話を思い出して、わたしは思わず、ぶるっと体をふるわせた。   大丈夫……だよね……?
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