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一度気にしはじめると、そこらじゅうにある物や暗がりが、いまにも動き出しそうに見えてくる。
歩くたびにギシギシと音がなる廊下。
くすんで白っぽくなった窓。
ところどころヒビ割れた壁。
桜木小学校は、100年前からある古い学校だ。
木造の校舎は、影ばかり多くて、まだ日が落ちていなくてもどこか薄暗い。
何かが潜んでいそうな雰囲気があちこちにある。
『あそこは伝統があっていい学校だよ』
大人はそんなことを言うけど、わたしにとっては、伝統なんてどうだっていい。
だって、ただのオンボロな建物にしか見えないんだもん。
となりの小学校は最近大きな工事があって、ピカピカの新しい校舎になったって聞いた。
それなのにこの学校は、まるで100年前から時間が止まっているみたい。
きれいな学校がうらやましかった。
真っ白なピカピカの学校なら、きっと勉強だって楽しいし、放課後1人で廊下を歩いていたって、怖くなったりしないのに。
3階にあるのは、音楽室と図工室とトイレ、そして、いちばん奥にあるのが、理科室だ。
放課後は使う人がいないから、人の声が届かなくてしんとしている。
あーあ、ついてないなあ。
なんでよりによって、理科室に忘れ物なんてしてしまったんだろう……。
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