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あなたと作り上げていく時間が好きだ。 良いものを作ろうとするあなたの側で、同じように気持ちを注いでいく。 「お前は天才だから…」 「お前のようにできたら…」 時々、あなたの口からこぼれる言葉には、必ず続きがある。 だけど負けない……… あなたが隣でそう言ってくれるから、僕も譲れぬ想いが溢れ出す。 僕達はお互いが補い合う存在ではない。 二人でぶつかり合い高め合い上っていく存在。 お互いの想い、視線、動きが手に取るように感じれるから、二人で完成させたものは最高の作品になる。 お互いの呼吸で感じられる満ち足りた想い。 ふと………あなたの小指が僕の小指に絡む。 高揚感の中で、あなたがくれるものは、甘い痺れとなって僕を溶かす。 「今日の夜、二人で抜け出そう………」 あなたからの秘密の誘いは、絡めた指に力を込めて返事に変えた。 明かりの消えた部屋で、聞こえてくる周りの寝息。 そっと部屋を抜け出すと、廊下で愛しい人が微笑んでいた。 夜の街は、静寂と冷たい風で僕達の距離を縮めてくれる。 触れる肩先。彷徨う指先。 まだ………確かめ合った訳じゃない あなたの想いも、僕の想いも……… でも、お互いに感じてる。他の人とは違う想い。 「コーヒー買ってくる」 コンビニに入っていく後ろ姿を見ながら思う。 僕達のこの関係に、いつか名前がつくのだろうか……… コーヒーを持って入った公園。 二人並んで揺れるブランコ。 他愛もない話が尽きない。緊張感から解放された心が穏やかになっていく。 明日からまた走り出さなきゃ行けない……… だからこそ、この時間が僕らには必要。 月と星だけが見守るこの時間。 「そろそろ帰ろうか……」 ブランコを揺らしていたあなたが飛び降りる。僕も名残を惜しんで立ち上がると、あなたに並んだ。 どちらが先に、空になったコーヒーのボトルを公園のゴミ箱に入れられるか、ふざけながら競争して……… ずるをしたあなたを追いかけて捕まえて、この腕に閉じ込めた。 速くなった鼓動。 いたずらな笑顔が目の前で弾ける。 そっと胸を押され、離れていく身体。冷たい風に震えると差し出された手。 「行こう……」 迷わず握るその小さな手。 僕を引いて進む背中に思わず呟いた。 「………また二人で抜け出そう」 「……うん」 繋いだ手の温もりが、僕を強くしてくれる。あなたに負けない自分でいたい。 ずっと………隣に並び続けるために……
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