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3
二人の秘密の想い出が、一つ二つと積み重なっていく。
その想い出を、ふとした瞬間に思い出しては笑顔になって……
友達以上、恋人未満のこの関係。
くすぐったくて………甘くて………
そう思っているのは僕だけじゃないよね?
その想いを確かめる術も時間もないまま、日常は目まぐるしく過ぎていった。
夢に近付けば近付くほど、二人の秘密の時間は減っていき、疲れきった身体を何とか動かして、毎日死んだように眠る日々。
もう何日、あの幸せな時間を過ごしてないだろう…………
一緒にいるのに、一緒にいられない。
こんな日々がいつまで続くんだろう………
今日も、ひたすらやるべき事を淡々とこなしている。自分達の目指す夢の為に………
それ事態に、心折れることは決してないけど………
あなたが足りない………
不意に鏡越しにあなたと目が合った。その瞬間弾かれたように動く身体。
「ちょっとトイレに行ってきます」
許可を得て廊下に出ると、すぐ横の壁に凭れた。
来る?来ない?
きっとそれが答え………
待っている時間は恐ろしく長く感じて、息が苦しい
指に後がつくぐらい力を込めて握った拳。目を閉じてカウントをする。
いち、に、さん、し、ご、ろくを数えたその瞬間、扉が開いた。
僕を確認すると、泣きそうな顔で笑うあなた。
僕はその細くなった手首を掴むと、誰もいない隣の部屋にあなたを引き入れた。
扉にあなたを押し付け、両手で頬を持ち上げる。
視線をその瞳からゆっくり唇を移し、そのまま奪った。
初めて触れたその唇。
同じ男とは思えないその柔らかさ。一度重ねたら止められなかった。食むように啄むように、繰り返し触れる。
あなたの手が俺の腰に回ったのを合図に唇を離した。
上気した顔が俺を見つめ、薄く開いた唇は色香とともにまた僕を誘う。
「お前が好きだ」
初めて聞けたあなたの気持ち。
「僕も好き……」
溢れる想いは言葉よりも唇で………
時間にしたらほんの5分。一方通行ではなかった気持ちに心が満たされていく。
「戻らなきゃ…」
「……うん」
時間をかけて重ね合った想いは、僕達の距離を一気に縮めた。
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