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7
タクシーを降りると、力ない笑顔で僕を迎える愛しい人。
ふんわりと抱き締められ、あなたの肩に顔を埋めた。
僕と同じくらい冷たい身体。ずっと待ってたの?
「………ごめんなさい」
「…うん」
あなたの手が背中を擦る。温もりが伝わってくる。
「……僕……大人になるから」
「……………」
「何に自分を集中させなきゃいけない時か、ちゃんと考えるから…」
「………うん」
「でも………僕の中が……あなたでいっぱいなことは………変わらないから…」
「……………分かってる」
二人の間に空いていた少しの隙間を埋めるように、あなたの身体が僕に近づく。
「僕だって……お前でいっぱいで溢れそうだよ…」
少し鼻をすする声に慌てて顔を上げたら、赤い目のあなたが柔らかく笑った。
触れるだけのキスをして、力の限りあなたを抱き締める。
恋人になってから初めての仲違い。
きっとこんな風に、僕らにはいろんな事が起きる。
でも………ぶれない想いで、あなたを支えられる男になりたい。
子供だった僕の小さな誓い。
いつの間にか止んだ雨の夜の出来事を、僕は一生忘れないだろう………
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