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母が死んだ。
胃腸がもともと弱かった母は、身体に不調を感じるたびに胃薬を飲んで誤魔化して生きてきたのだ。
シングルマザーで仕事最優先だった生活がたたり、いよいよ病院へ行かなければ治らないと思った頃にはもう手遅れだった。
ガンだったのだ。
全身に転移していて治療もできずに最期を迎えた。
私は高校からの帰りに病院へ寄り、夜間はカラオケ店でアルバイトをしていた。
母が働けないから、自分が高校を卒業するまでは何とかアルバイトで凌ぐしかない。
母が残してくれた少しの貯金と学資保険、自分のアルバイト代で生きていくしかなかった。
外は雪。
暖房もない六畳一間の部屋で線香を灯し、母の遺影に供える。
スマホからは年末の交通情報や大掃除の仕方、イベント情報がひっきりなしに流れてきて、思わず私は泣きそうになる。
世界で、ただ一人ぼっちになってしまった。
そんな最悪な年末を過ごしていた時、私は偶然彼と出逢った。
私はショーウィンドウにへばりつくように彼を見つめた。
"AI型ロボットは次世代の家族"
そんなようなキャッチフレーズだったと思う。
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