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「学生さんですか・・・・」
と店長の垣谷さんは目の前の少女を見つめて言った。その視線は少しだけガッカリしているように私には見える。
「やっぱり・・・高いですよね?アルバイトはしているんですけど」
と、半分諦めモードで言ってみる。
こんな10代の学生に買えるほど、AIロボットは安くはない。
「学生さんだから、という理由ではお断りはしていないんですよ。我々もAIたちにはより沢山の人々と家族生活を味わって貰いたいという意志が根源にはありますので」
と、垣谷さんの縁無し丸眼鏡の奥にある瞳が笑う。
「具体的に、月々どのくらいならお支払い可能ですか?」
「え、ローン組めるんですか!?」
自分でもビックリするくらい高い声が出た。
「通常はローン設定はできかねます。プログラミングで人間の基本情報は入れてお渡ししますから経費もかかりますし。どういった人格の家族を望んでいるか、あらかじめお客様にお訊ねしてこちらも把握しないといけません」
「なるほど」
「ですが、あなたは他のお客様とは違ってAIロボットに対する熱量が随分高く存じます。何か、やむにやまれぬご事情がおありのようで・・・・」
「そう・・・かもしれませんね」
と私はショーウィンドウに飾られている男性のロボットを見た。
無性に彼を連れて帰りたい、そんな情熱が沸き上がってきて自分でも不思議なのだ。
今の私には家族が必要なのかもしれなかった。
たとえそれが血の通う人間じゃなくても。
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