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ショーウィンドウの彼は、翌日我が家にやって来た。
母1人子1人で暮らしていた狭い部屋に、いきなり大人の男性サイズのロボットが入ってきたのだから違和感しかない。
梱包をほどくと、ビニールに包まれた人間そっくりの彼が現れて、一瞬、箱から出すのを躊躇した。
でも、ビニール越しの彼の瞳がやたら悲しげに見えてヨイショ、と床に立たせてみる。
身長179センチ。
スラリとした長身。生きていたら普通にモテそう。
私は説明書に書いてある手順通りに、背中にあるスイッチを押していく。
最後に赤いスイッチを押すと、彼が起動するらしい。
1度起動したら、充電が無くなるまでは動き続けるらしく、途中で強制終了するにはこの赤いスイッチを押さなければならないのだ。
私は意を決して赤いスイッチを押した。
無表情だった彼の瞳が急に明るくなった。
無事に起動したらしい。
「コンニチハ。柄田菜々実サン。ワタクシハAIロボットの茗荷谷デス」
彼が初めて話したのは、インプットされた私の名前と、彼自身の名字らしい言葉だった。
「ミョウガダニ?」
妙な名前に私はロボットのように聞き返す。
「ハイ。茗荷谷デス。ワタクシノ名前デス」
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