【1章】AIの失踪

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 私達が配属されている新宿署にも、AI絡みの事件の通報が年々増えてきた。  今回の事件もまた例に漏れずAI絡みのものだ。  大手企業のコールセンターのシステム上で働くAIが忽然とネットワークから姿を消したという。  しかも、会社の金を根こそぎ奪い去ったというのだから厄介だ。 「わざわざ残していったってことは、何か伝えたい事がこれに込められているんじゃないの」 「犯行声明みたいなもんですか」  今いるこの場所は、仮想空間になっている例のコールセンターのシステム内だ。  こんな広い空間にたった一人きりで、そのAIは膨大な数の問い合わせの電話を受け続けてきたのだろう。  人間だったら、まず耐えられない仕事量だ。 「取り敢えずは、ここを出て聞き込みですね」  嶋田が溜息と共にそう呟いた。
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