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時代の最先端をいく企業は受付から駐車係に至るまで、全てをロボットで賄っている。
自分達の持つ技術をひけらかしているかのようだ。
車に乗り込んだ途端に嶋田が言う。
「東風のK、ってことはありませんかね」
「そんなに安直ではないでしょ」
「そうですよね」
嶋田は苦笑しながら肩をすくめてみせる。
車は静かに走り出し、地下駐車場を抜け出した。
「けど、なんや不思議ですよね」
「何が?」
「こんなに技術は進んでるのに、電話っちゅう古典的なモンが今でも残っているのが」
私はハンドルを握ったまま答える。
「"声"で伝えたいっていう欲求がいまだに根強いからだと思う。文字でダラダラと嫌味を書き連ねるよりも、直接怒声を浴びせる方が気が晴れるんじゃないの、多分」
「……人間、ほんまに怖いわぁ」
助手席の背もたれに肩を沈めながら嶋田がぼやく。
「石橋さん、俺のこと署まで送り届けたらもうこのまま直帰してください」
「え、何言ってんの。私も一緒に戻るよ」
「今日くらい早めに帰った方がええですよ。台風も近づいて来てるらしいし」
腕時計型の携帯でお天気アプリを起動しながら言う嶋田に、私はにやりと笑い掛けた。
「調べたいものがある」
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