【2章】手掛かり

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【2章】手掛かり

 署内の鑑識課に赴いた私と嶋田は、目の前に置かれた4Dプリンターから出力される様子を見詰めていた。 「……こないな事して、上に叱られませんか?」 「気付かれなければ問題ない」  ぴんと伸ばした人差し指を口元にもっていく仕草をすると、嶋田は不安げにぎゅっと眉を寄せた。 「しかし、よう気付きましたね」  今日捜査に訪れた東風の勤めていたシステム内にある彼女のデスク。  やけに無機質な室内にそのデスクだけが残されていて、卓上には黒い電話機が置かれていた。  引き出しを片っ端から開けてみると、どれも中身は空っぽで手掛かりはなさそうに思えたが、天板の裏に一枚の硬貨が貼り付けられていた。  事件に関連ある物に違いないと、こっそり携帯でスキャンしておいたのだ。  4Dプリンターで出力すれば、外側だけじゃなく、その内部の細部に至るまで再現が可能だ。 「……ギザ10やないですか」  出力された実物瓜二つの硬貨を見下ろして、嶋田がぽつりと呟く。 「現金がまだ使われていた時代には、幸運の証って言われていたらしいよ」 「それは知らんかった」  白い鑑識用の手袋を嵌めて硬貨を手に取ると、側面にカッターの刃をそっと入れる。  硬貨が上下の二つに分かれて開き、中から小さなマイクロチップが出てきた。
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