【2章】手掛かり

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 腕時計にチップを挿入すると、中に入っているのは膨大な量の音声データだった。 「なんですか、これ」 「……再生してみよう」  一番上に表示された音声データを再生してみる。  鈴の音ように軽やかな女性の声が告げる。 『お電話有難うございます、こちらは"こころをつなぐ電話相談室"です。なお、この通話には20秒ごとに千円の料金が発生します』  音声を聞きながら、思わず私と嶋田は無言で顔を見合わせた。 『こころをつなぐ電話相談室の東風がお受けいたします。どうなさいましたか?』 『……もう嫌だ……死にたい』 『私でよければ、お話聞かせてください』  暗く沈んだ声に、彼女は柔らかな声音で応えていた。  別のデータも同じく、掛かってきた性別も世代も様々な相手の電話に東風が親身になって応えている通話が録音されていた。 「……コールセンターって」 「なにが"こころをつなぐ"や。ありえん連中やな」  電話口でとうとう泣き出した相談者に、温かな口調で語りかける東風の声を聴きながら私は口を開いた。 「東風がこれを残していったのね」 「こんなこと続けていくのが、しんどくなったんやろな」  ちらりと見た嶋田の横顔が悲しげに曇る。  再生をオフにすると、私は握りしめていた硬貨を机の上に叩きつけた。 「取っ捕まえてやろう。彼女にこんなことさせていた連中を」
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