【2章】手掛かり

3/4
前へ
/17ページ
次へ
 捜査令状をとって東風が勤めていた会社へ乗り込むと、逮捕された重役は目を白黒させながら大声で叫んだ。 「どうして私が捕まらないといけないんだ。罪を犯したのは金を持ち逃げしたAIだろ!」  動揺している彼の目の前で東風が残していった通話記録のデータを再生すると、男は途端に態度を変えてしおらしくなった。 「たしかに自殺防止ダイヤルは一般企業に委託されるようにはなりましたが、これは確実に通話料で稼ぐのが目的なのと国からの助成金狙いですよね」  AI管理下社会が廃止となった後も、職を失い貧しい暮らしを余儀なくされた人々の生活は変わらず。  どこかに逃げ出すことさえ出来ずに、死を選ぶ者が後を絶たなかった。  事態を深刻に受け止めた国は、自殺防止策を講じた企業に助成金を出すようになった。  助成金の対象となるのは、あくまでAIを利用しておらず人手と費用が必要な企業のみなので、これは立派な違法行為にあたる。 「我々は悪い事は何一つしていない。受付や清掃にロボットを使っているのと同じ事じゃないか」 「……機械に頼りすぎて、人の心を忘れたんか」  哀れみの眼差しを向けながら嶋田が言う。 「ミイラ取りがミイラになる事態を避ける為に造られたんだ、東風は」  こちらを睨みながら、男は吐き捨てるようにそう言った。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加