THE BODY

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 ガイは穴にバールを引っかけ、蓋をこじ開けた。中に入っていたのは三十代ぐらいの男性と、二十代半ばの女性の遺体だった。その顔や頭には無数の傷跡があった。 「間違って入ったのか?」ガイはそう言って、首を振った。 「分からない」ダンは動揺しながらも、棺桶に付いていたタグを確認した。「ここに、“パーペチュア・アップルビー”って名前がある」 「珍しい名前だな」ガイは言い、頭を掻いた。「テオに報告した方がいいよな?」 「いや、中を見たのがバレるのは拙い」死者への敬意と、プライバシー保護の為に棺桶の中は見てはいけない決まりになっていた。「それに、うちは棺桶を引き取るだけだ。何かを知ってるとしたら依頼人の方だろ」 「こいつを焼かない限り、次の棺桶に手は出せないぜ」 「取り敢えず、この二人の素性を調べてみるんだ。そこから何か分かるかもしれない」ダンは言い、気を落ち着かせる為に深呼吸をした。「炉の調子が悪いって事にしておこう。そうすれば二、三日は時間稼ぎが出来る」  ダン達は地元警察に聞き込みをし、図書館で新聞や行方不明者のリストに当たってみたが、目ぼしい情報は出てこなかった。 「珍しい名前だから、探しやすいと思ったんだけどな」ガイはそう言った。「こうなりゃ、片っ端から新聞社に当たってみるか」  ダンは州内外の新聞社に電話を掛けてみた。何軒も空振りで終わったが、コロラド州の、ある新聞社から気になる情報を得た。  “パーペチュア・アップルビー”という人物はヒットしなかったが、同じ名前の“パーペチュア・ノートン”という二十代の女性が、二日前に車で交通事故を起こして亡くなっていた。そして、三日前にワイオミング州の田舎町で、“ロン・アップルビー”という三十代の男性がバイクで事故死をしていた。 「その二人を合わせて、“パーペチュア・アップルビー”か」ダンはそう言い、膝を打った。「こんな珍しい名前の人間が同じ時期に、同じ西部で事故を起こして死亡したのは偶然じゃないだろう。彼等の傷は事故で負ったものだった」 「取り敢えず、火葬場に戻って他の棺桶も調べてみるか」ガイはそう呻いた。
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