6人が本棚に入れています
本棚に追加
三人は再び火葬場に戻って来ていた。テオの言う通り、目を瞑ればいつもの日常が戻ってくる。死者の声に永遠に耳を閉ざすのなら。
ダンは重苦しい空気に耐えられず、火葬場を出るとトラックの荷台に座り込んだ。空を見上げると美しいミルキーウェイが広がっていた。
ザックが心配してダンを追いかけて来た。「大丈夫か?」
ダンは項垂れた。「結局、俺にはこの仕事が必要だ。お袋の薬代がいる」
いつかガイが、ボディを死体町だと言った事があった。だが、死人なのは事実に目を瞑り、黙認しようとしている自分達の方だった。
「いっそ、大洪水でも起きてくれれば」ダンは言った。旧約聖書のノアの箱舟のように、地上の罪を神の力でもって洗い流して欲しかった。この町を真っ新な大地に戻して欲しかった。「そうしたら、この町を出ていけるのに」
最初のコメントを投稿しよう!