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「お母さーん。お兄ちゃんがゲーム変わってくれない〜」
「いま洗濯物取り込んでて手が離せないから、お父さんかお兄ちゃんの誰かに言ってー」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「あ、一ろーーが泣き出しちゃった。あれ忙しい忙しい」
「お外で遊びたいよ〜」
「お外で遊びたいよ〜」
「お外で遊びたいよ〜」
「インイチガイチ、インニガニ、インサンガサン、インシガシ、インゴガゴ」
「一杉は偉いなあ。九九の練習をしてるのか」
「おはよう」
「あれ、お父さんいま起きたの〜?」
「いま起きて悪いか!」
「お母さ〜ん。誰かがトイレからずっと出てこな〜い」
「さっき、一太がトイレに入っていってたよ」
「僕はここにいるよ」
「もしもし、あ、お世話になっております。先日はありがとうございました。ええ、ええ」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「ひゃー。逃げろー」
「こら、家の中を走るな。近所からまたどやされるぞ!」
「ニイチガニ、ニニンガシ、ニサンガロク、ニゴジュウ」
「きっとウイルスは、アメリカの陰謀に違いない」
「そちらの件なんですが、いま少々立て込んでおりまして、少々、本当に少々ですが、遅れておりまして。ええ、ええ。誠に申し訳ございません」
「弁当届いたみたいだよー」
「わーい!」
「わーい!」
「わーい!」
「わっ。臭い。誰かオナラした?」
「一助じゃない?」
「違うよ。一平じゃない?」
「違うよ。お父さんじゃない?」
「屁こいて悪いか!」
「お母さ〜ん。お父さんがオナラした〜」
「おんぎゃー。おんぎゃー」
「もしもし、みゆきちゃん、元気? 俺はいま家から出れなくて大変なんだよ〜。出れるようになったら、またみゆきちゃんの家いくね〜」
「みんな〜。ご飯よ〜」
「いやあ、実においしそうですなあ」
「誰だお前!」
「あっしですか? あっしは一太郎ですよ。あなたのお兄ちゃん。忘れたんですか〜?」
「一太郎なんて、この家にいたっけ?」
「サンイチガサン、サンニガロク、サザンガク、サンシジュウニ、サンゴジュウゴ」
「勉強してないで、ご飯にしなさい」
「あ、まだお兄ちゃんゲームしてる〜」
「でかいウンコ流してないのだれ〜?」
「どうせまた一坊でしょ?」
「俺じゃないよ。お父さん、さっきトイレに行ったよね?」
「ウンコがでかくて悪いか!」
「あれ? 弁当一個足りない」
「きっとNASAは、宇宙人の存在を隠してるに違いない」
「一助、変なテレビの見すぎじゃない?」
「あー、お腹いっぱい」
「食べてすぐ寝ると、鹿になるぞ」
「スリムになるんだね」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「ああ忙しい、忙しい」
「いやあ、賑やかですなあ」
「こいつの顔、見たことないような気がするんだけどなあ」
「あ、もしもし、先日はどうもありがとうございました。ええ、その件でお電話したんですが、ええ、ええ、そうです、そうです」
「あ、もしもし、よしこちゃん、元気? 俺は今家から出られなくて大変なんだよ〜。出れるようになったら、またりょうこちゃ、間違えた、よしこちゃんの家行くね〜」
「お外にいきたいよ〜」
「お外にいきたいよ〜」
「お外にいきたいよ〜」
「今日のお風呂掃除って誰だっけ?」
「一太じゃなかった?」
「アニメ見てもいい〜?」
「駄目だ!」
「あ〜、眠くなってきた、眠くなってきたけど、うるさくて眠れない」
「シイチガシ、シニガハチ、シサンジュウニ、シシジュウロク、シゴニジュウ」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「こらっ。家の中を走っちゃいけないって言ってるでしょ」
「成人式、なに着ていこうかなあ」
「どうせ百年後には、誰も生きていない」
「あっ。ゴキブリ」
「わー!」
「ぎゃー!」
「ゴイチガゴ、ゴニギャー!」
「もしもし、いつもお世話にぎゃー!」
「誰か、早くやっつけてー!」
「あっしにお任せください」
「あっ」
「えっ」
「おっ」
「凄い、手掴みしてる」
「まあ、ありがとう。あれ? あなた誰?」
「やだなあ、お母さん、一太郎ですよ」
「一太郎なんて、この家にいたかしら?」
「あっ。一生がお皿割った」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「こんなにいい天気の日に、外に出られないなんてな」
「窓の外を見て。綺麗な夕日だよ」
「わあ」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「綺麗でゲスねえ」
「ゲス、なんて喋り方の人、この家にいたっけ?」
「ロクイチガロク、ロクニジュウニ、ロクサンジュウハチ、ロクシニジュウシ、ロクゴサンジュウ」
「あっ。お兄ちゃん、やっとゲーム変わってくれるの〜」
「ねえお母さん、赤ちゃんはどうしたら生まれるの?」
「お父さんに聞きなさい」
「ねえお父さん、赤ちゃんはどうしたら生まれるの?」
「やかましい!」
「え〜ん、え〜ん」
「そろそろ、お風呂入れなきゃね。一太、一坊、一助、先にお風呂行ってきてー」
「なんでこの歳になって、一緒にお風呂なんて入んなんといけんないんだよ」
「ぶつぶつ言うな!」
「このゲームつまんない」
「眠たくなってきた〜」
「眠たくなってきた〜」
「眠たくなってきた〜」
「恐竜ごっこごっこしよ〜」
「いいよ〜」
「あっしも混ぜてくれやせんか〜。ゲヘヘへ」
「ねえ、一太、いま俺らと一緒に風呂入ってたやつ、誰だっけ?」
「いや〜、三人で入るには狭いけど、いいお湯でしたな〜」
「あれ? そういえば誰だっけ?」
「あっ、トイレに行った隙に、ソファー取られた。誰だお前!」
「だから、一太郎ですって」
「こんな顔のやつ、兄弟にいたっけ?」
「シチイチガシチ、シチニジュウシ、シチサンニジュウハチ、シチゴサンジュウ、シチロクシジュウハチ」
「間違えてるぞ」
「七の段はやっぱ難しいな〜」
「あ、もしもし、まみちゃん? あれ? 誰? 男の声だけど、え? まみの彼氏?え? え? あー、すいません、すいません、さよなら〜」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「ああ、また泣き出して。あれ忙しい、忙しい」
「あ、冷蔵庫のプリン食べたの誰?」
「食べて悪いか!」
「あれ? チャイムなった。誰?」
「誰がきたのー」
「誰がきたのー」
「誰がきたのー」
「あなた、誰だったの?」
「いや、なにか、不審者の目撃情報を募ってたみたいだ」
「あら、怖いわねえ」
「会ってよかったの? 自宅待機中なのに」
「あ、そういえばそうだな」
「ロシアからの刺客に違いない」
「不審者ですか〜? 怖いですな〜」
「ハチイチガハチ、ハチニジュウニ」
「いつまで言ってんだ!」
「あらら、気づけばもう三分の一くらいは寝ちゃったみたいね」
「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹」
「頭の中で言えよ」
「よし、そろそろ静かになってきたから、受験勉強だ」
「一坊は偉いわねえ。お父さん、勉強教えてあげたら。あ、もう寝ちゃった」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzzむにゃむにゃzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「おんぎゃー、おんぎゃー」
「あらら、また泣き出しちゃった」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzzクイチガク、クニジュウサン、クサンニジュウシチzzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzzお腹いっぱい」
「あらら、寝言か。私も眠たくなってきた。一ろーーももう寝たみたいだし」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「へっへっへ。みんな寝たようだ」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「不用心な家族だな、鍵も開けっぱなしで」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「思った通り、これだけ家族がいりゃあ、一人増えても気づかない」
「zzzzz」
「zzzzzへへへzzz」
「zzzzz」
「これからしばらくは、この家族に紛れこんで生活しよう」
「zzzzz」
「zzzzzむにゃむにゃzzz」
「zzzzz」
「これからも、よろしくお願いしやす」
「zzzzz」
「zzzzz」
「zzzzz」
「げっへっへっへっ」
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