ネクロマンサー

1/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

ネクロマンサー

水が岩をうつ音で男は暗い暗い地下の空洞で目を覚ました。ジメジメとしていて天井に空いた少しの隙間から、微かな光が差し込んでいる。体を起こしてみると、下半身は地下にできた池に浸かっている。普通ならば慌てるような状況なのに、なぜか男はこの空間に安心感を感じている。 しばらく男は天井の穴を見上げていた。ふと下に目をやると池の中で何かが光っていることに気がついた。紫色の暗い光だ。光が何なのか気になった男は、池の中に顔をつけると光っている何かを手に取った。 とっその瞬間!!男は謎の力で池の底へと引っ張られる!手を離そうとしても謎の力によってどんどんと握り締めてしまう。わー!!っと水の中で絶叫しながら気を失ってしまった。 「親方!!」 酒場を身長の低い男が、パタパタと走り回る。 「どうしたジャラク」 今度は手下を引き連れ食事をしている大柄でりっぱな髭をした男が、手下の名前を叫ぶ。 「今、店主に話を聞いたところ。やはりこの町の近くにある谷がネクロスの谷らしいです」 「ほお、やはりか」 大男は肩に下げた鉄製のポーチから、赤い本を取り出すと、ペラペラとめくる。特定のページを見つけ出すと、人差し指で文字をなぞる。 「・・・ネクロス王の死越斧か・・・くくく」 翌朝、大男率いるトレジャーハンターの一団は、ネクロスの王が眠る谷へと出発した。 「親方、ネクロスって言ったら死体を操っていたらしいっすよ。しかもその死体は斧の力を得てものすごく強いらしいっす」 「ふん、そんなの昔話に過ぎない、王国はとっくに滅んでるんだ、今は帝国兵が少し居るぐらいだろうさ。それにしても戦争ってのはいいもんだな、お宝が盗み放題だぜ」 「まったくですぜ」 トレジャーハンターの一団は、谷へと到着すると数分で警備兵を倒し、斧が眠る祭壇へと向かった。しかし斧が眠る祭壇は無く、祭壇があったと思われる場所には穴が開いていた。 「なっ!」 「あっ穴が空いてますぜ親方」 「くっ斧はこの穴の中だろう。お前ら取って来い!」 親方は手下に指示を出すと、手下たちは穴の中にロープをたらし、地下へと潜る、するとそこにあったのは池だった。ジメジメとくらい空間に手下の松明が光をあたえた。手下たちは隅々までお宝を探し回ったが、斧はどこにもなかった。 「なっ!!なんだ!てめぇわ!!」 手下たちがお宝を探し回っていると地上の方から親方の慌てる声が聞こえる。 「がっ!!くっ」 「どうしやしたか?親方」 慌てる声は一瞬のうちに消えた。すると穴の壁にぶつかりながら、何か大きいものが落ちてくる音が聞こえた。ドサドサと手下の前に何かが落ちてきた。 「親方?これはなんすか?」 そう言うと松明を近づける。 「けっ!?」 驚き松明を落として尻もちをついてしまった。 「どうしましたジャラクさん」 目線を松明の方へ向けると、そこには首が跳ね飛ばされた親方の死体があった。奥歯をガタガタと鳴らしながら、その場に硬直していると死体の指が地面を力強く掴んだ。手下たちは自分の目を疑った。しかし死体は膝をつくとゆっくりと立ち上がった。 「なぅああああ!!」 その場を見ていた二人はようやく叫び声を上げた。すると他の仲間がそれに気づき、様子を見にくる。するとジャラクは、池に飛び込んで叫びながら泳いで、出口とは反対方向へと泳いでいた。 「なにかあったんですかい?」 仲間の一人が声をかける。しかしジャラクは声が聞こえないのか、そのまま空洞の奥へと逃げていく。トレジャーハンターたちは出口の方へ向かう。するとなんだか鈍い、何かを叩くような音が聞こえてきた。そして、出口にたどり着くと、松明に照らされ、おぞましい光景を目にする。 仲間の一人が首の無い身長2メートルはある化け物にタコ殴りにされながら、かすれた叫び声を上げている。化け物は大きく拳を振り上げると、トドメの一撃を撃ち込む。拳は顔面にめり込み、手下は全身の力が抜け息をひきとった。 「なっ!なんだこいつぁ!!」 化け物は起き上がると体をトレジャーハンターたちの方へと向ける。 「うあああああ!!」 トレジャーハンターの一味は、震える足で空洞の奥へ一目散に逃げ去った。ドスドスと言う足音をたてながら化け物はトレジャーハンターたちを追いかける。そして空洞の行き止まりに到着した。 「しっしかたねぇ、野郎ども剣を構えろ!」 一人の合図で全員が剣を抜くと松明を暗闇に投げ込む。のそのそと言う足音が空洞に反響している。 「来るなら来い化け物・・・」 そして松明の光で化け物の足がほのかに映し出された。 「行くぞ!!」 そう言うとトレジャーハンターたちは、化け物へ襲いかかる。盾を構えた3人が、化け物の前に立つ。しかし化け物の強烈な拳は、前衛を吹き飛ばし盾を粉砕した。そして後衛から数本の矢が放たれる。矢は化け物に命中する。一瞬怯んだところに他の仲間が襲いかかる。そして化け物の左腕に剣が食い込み、胴体に数本、矢が刺さる。 しかし化け物は怒りで暴れ出した。右腕で2人の仲間を吹き飛ばすと、そのまま左腕に剣で攻撃してきた1人を頭を掴んで持ち上げる。そしてそこに二発目の矢が3本命中する。少し怯んだ隙に足で化け物を蹴りなんとか脱出する。そして盾を持った2人が前に出る。 しかしそこへ、のそのそと2体目の化け物が奥から現れた。一体目ほど巨大な化け物ではないようだ。 「新手だと」 そして3発目の矢が放たれる。数本の矢が大きい化け物に命中した。大きな化け物は膝をついた。前衛の1人がトドメを刺そうとする。しかし新手の化け物が横から襲いかかる。盾を持った仲間が攻撃を防いだ。そして透かさず剣で斬りつける。 「こっちはそんなに強くなさそうだ!」 そして4発目の矢が放たれ、立ち上がりかけた大きな化け物に命中。しかし化け物は前衛の2人に襲いかかった。化け物が拳を振ると1人は攻撃をかわしたが盾を持った仲間が頭に拳を受け吹き飛ばされた。 「俺が抑える!弓で倒してくれ」 そして5発目の矢が放たれる。 「ぐあ!!」 「しっしまった!」 なんと放たれた矢が、1発味方に当たってしまった。一瞬体制が崩れたところを化け物に攻撃される。見事な裏拳がクリーンヒットし、すごい勢いで吹き飛ばされた。 そして化け物はのそのそと弓兵の方へ向かう。弓兵は2人剣を抜くと化け物の前に立つ。剣を握る手はガタガタと震えている。 「まて」 暗闇から男の声が聞こえた。そして、その声を合図に化け物の動きがピタリと止まった。松明の光に照らされ1人の男が現れた。その男は30代後半くらいの見た目で、短い黒髪にオレンジ色の変わったボロボロの服を着ている。その右手には、派手に装飾された、長さ70センチ程の、銀色の斧を持っている。トレジャーハンターの弓兵たちは、手を止め全員がその男に視線を送る。 「だっ誰だ、あんた」 弓兵の1人が額に大量の汗を掻きながら、酒にやけた声で聞く。男は弓兵の方へとクイッと目をやる。 「なぜ・・・なぜ墓を荒らした」 声はしたが男の口は動いていなかった。そして、その場にいる弓兵は目を疑った。なんと銀色の斧が紫のオーラを発している。 「なっ!?まっまさか斧が喋ってんのか」 「なぜ墓を荒らしたかと聞いているんだ。真当な理由があるなら今ここで述べよ」 「おっ俺たちが生き残るためさ、今は帝国と北部連合と王国、南部部族が戦争しあって国は貧しくて荒れ放題、街には物乞いや死体が溢れてんだ。盗掘でもしなきゃ生き残れねぇんだ!」 「ほう、なかなか真当な理由だな」 弓兵たちは安堵し息を吐いた。 「だが、この墓を荒した事は許せん!ここには我が偉大な王が眠る墓だ!おぬしたちには、その血で償ってもらう」 オーラがさらに大きくなり激しさを増す。 「俺もやるのか?」 オレンジ色の服を着た、奇妙な男は目線を斧の方へ向けると話しかける。 「ああ、我はサポートに優れていても、生き物を操るのは得意ではないらしい」 「わかった」 とその時弓兵が矢を放つ。しかし大きな化け物が肉壁となり斧を守り矢が刺さる。男は大きな化け物の影から飛び出すと前に居た2人の弓兵に襲いかかる。弓兵は剣でなんとか防いだ。そこへ、もう一人の弓兵が加勢しようとするが、透かさず大きな化け物が加勢に入ろうとした弓兵をつかみ上げた。そこに追加の矢が放たれる。 大きな化け物の左肩に1発命中したが全然効果がない。大きな化け物は持っていた弓兵を地面に叩きつけると頭に強烈な拳をおみまいした。弓兵は顔がぐちゃぐちゃになり息絶えた。 その頃もう一方は 「われの攻撃がそんなナマクラで防げると思ったか」 紫色のオーラが増すと弓兵の剣がギリギリと音を立て直後剣が吹き飛ばされる。そして弓兵の胴体へ斧が食い込む。そして頭にもう1発斧をおみまいした。 あとの弓兵は恐怖から膝をついてガタガタと震えるしかなかった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!