人間

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人間

 私は高校2年生。佐藤 真澄。  家族はいない。買い物に出た先で大きな爆発事故があって私以外助からなかった。  それからは政府が管理する寄宿舎で暮らしている。  授業は全部リモートだし、洋服は外出しないので、毎日最初に入院したときの丈の長い上着と膝丈のショートパンツで過ごしている。  毎日同じものが朝になると部屋の外に置いてあるのでそれに着替える。  食事も決まった時間になると部屋の外に置いてあるので、それを食べて、食べ終わったら廊下に出しておく。  外に出たくないかですって?  いいえ。私はこの部屋からは出られません。  何故なら佐藤 真澄の脳が埋め込まれたロボットなのですから。  佐藤 真澄も怪我が酷く、損傷がなかったのは脳だけでした。  そこで、胸にAIを搭載されたロボットの私は、人間の頭に当たる部分に佐藤 真澄の脳を埋め込み、行動を観察しているのです。    もっと、人間らしい行動をするかと思ったけれど、佐藤 真澄の脳も、停止していたようで、そこからの回復は見られない。何かしたいとか、欲しいとか、そういった感情はすでに消えてしまったようです。でも、脳自体は生きているのです。着替えたり、食事を食べたりしているのは佐藤 真澄の脳の指令なのか、AIの胸からの知れなのかの判断がつきません。  そして、脳が生きていくための装置のコードなどがつながっているため、部屋の外には出られません。  人間の脳が入っているのだから。分類的には私は人間です。  きっと。 【了】  
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