使い捨て

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プロローグ ガン!もの凄い音がして、大きな金属の塊、箱のようなものが落ちてきた。空中にあらわれたかと思うと、突然重力があることに気づいたかのようにガン!ガン!ガン!とひどい音をたて、波うちぎわの岩だらけのごつごつした地表に次々と落ちてきた。たちまちその金属の塊は岩肌を覆い始めて海へも転がり落ち、あたりを埋め尽くした。ついにはその埋め尽くされた塊の上にまで落ちてきてドカッ!ドカッ!と鈍い音が響き始めた。一部は変形し、破損しているものもあった。いったいいつまで続くのかと思われる頃、突然静かになった。岩に寄せ砕ける波の音だけが残った。金属の塊が消波ブロックのようになって、波の音が少し小さくなった。 空は暗くてねずみ色の雲が広がり、稲妻が光ってときおり激しい雨が降ったかと思うと薄い光がさすこともあった。山々の多くは火と煙と熱い石つぶてを吹き上げ、赤く光る溶岩を垂れ流していた。地上に動くものは何もなかった。垂れ流されたものが固まった岩と、長い時間をかけて砕かれた石ころがただただどこまでも続いていた。時間が流れているのか止まっているのかのような、永遠のように続く時間の中でいつまでも同じ空、雲、熱くたぎる山々、その熱く融けて流れ出る液体の鉱物を波は受け入れ蒸気を上げていた。金属の箱もその液体の鉱物に一部飲まれ、融け、海へと押し流されていった。 それからまた記憶という言葉の意味さえ消え去るほどの長い時間をかけて海水と潮風に浸食されていき、赤黒い塊となったそれはぼろぼろと崩れていった。金属の内側にあったガラス繊維に固められたものもひとつひとつと海へ転がり落ちていき、深く暗い闇の中へ沈んでいった。 世界は静かだった。まだ暗い海の中に小さな命が蠢いているだけだった。それはやがて多種多様な命の爆発をおこす可能性を秘めていた。が。
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