まだまだ、子豚です!

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まだまだ、子豚です!

   イケメン王太子に何故か抱っこされて、城に連れて来られた。  白馬に乗った王子様が、子豚を抱える絵はおかしいと思う。  まあ、籠とかならまだ許せるし、逃げたかもだけど。  そして未だに僕は王太子に抱っこされたまま、国王に謁見されてます!? 「レオハルトよ、討伐ご苦労だった。  して、その魔物は?」 「はい、父上  この者、かなり特別な子豚故、連れ帰りました。  いずれ私の右腕として成すかと。」 「ふむ  豚の魔物を側に置くのか?  いくらなんでも、な  非常食とかなら分かるが」  国王の言葉に、側近達から失笑が漏れた。 「いえ、この者は言葉を理解しております。   心なきお言葉はお控えください。」 「従魔契約をしてしまった後か…」 「いえ、しておりません。  契約の魔法陣を、割られてしまいました。」 「は?  魔法陣を割る?」 「はい」  騒つく人達がまさか、とか、おかしいとか言っていた。 「えぇ、無理矢理契約しようとして、割られました。  ですから、ちゃんと話してお願いをしてから同行してもらい、この子の判断で契約をする約束にしました。」 「レオハルト、この豚がそれを理解したと?」 「はい。」  そうだよ!僕は自分の意思で此処に来たけど、豚だからって舐めんなよ!  〔ぷぎー!ぷきゅぷひぶひぷぎぷぎぷきゅ、ぶい、ぶぎゅぷぎぎぷぎゅ!〕  断固抗議する! 「ふふ、ね?  ちゃんと理解して文句を言ってますよ  可愛いくないですか?  私はこの子の寝姿と、この特別な力に惚れたので、将来はこの子を伴侶にするかもしれません」  はあ?!  〔ぶひ?!〕  ぐりんと王太子を振り返って見た。  この上なくデレた表情で、僕を撫で回していた。  いや、いや、正気になろうよ!  〔ぷき、ぷき、ぶきゅきゅぷひ!〕 「ね、父上、可愛くないですか?」 「ほう、それ程か  まあ、レオハルトがやっとその気になったのなら、良い事だしの。  して、その豚、いやその者に名はあるのか?」 「従魔契約をして付けようと思いましたが、それは叶わなかった為、まだでございます。」 「では、此処で皆に知らせる為にも、仮の名付けをすべきかもな。」 「はい、良い名を道中考えましたが」  名前って僕にはちゃんと咲季(さき)って名前があるんだから!  〔ぷきゅぷひぷぎゅぅぷひぷひゅぷきゅきゅぅ!〕 「ん?  名前は付けない方が良いか?」  違う!  首を振る。 「名前があるのか?」  うん!うん!そう!  こくこく頷いて、意思を示すと更にどよめきが上がった。 「名持ち?なのか?」 「従魔契約もせず、名前を持つ魔物など魔王レベルではないか!」  へ?魔王?  〔ぷ?ぷきゅ?〕  違うよ、そんな力もないもん!  〔ぶきゅ、ぷきゅきゅぷひぷひ!〕 「父上、この子はそんな悪ではありませんし、まだ子豚です。  私が悪い方向へいかないよう、育てます」  キラッキラの笑顔で言ってるけど、僕中身は16歳だし、この世界とは関係なく生きて行きたいし、伴侶とか頭湧いてるとしか思えない王太子と一緒なんて怖いよ。 「さあ、名前を教えておくれ?」  咲季、さきだよ。  〔しゃきゅ、しゃきゅぷ〕 「しゃきゅ?」  さ、さ、き  〔しゃ、さ、きゅ〕 「さきゅ?」  ふー、ふー、口が回らないよ、もう一回。  さ、き  〔さ、き〕  おー、言えた! 「さき、か?」  そうそう!  〔ぷいぷい!〕 「さき、可愛い名だ」 「さきと申すのか。  自分で名乗るとは、すごい子豚だな  だが、レオハルトよ、  もし、このさきが悪へと動くようなら勇者ルイに討伐させる。  覚えておけ」 「父上、勇者が現れたのですか?」 「おぉ、紹介がまだだったな。  ルイだ。」  現れたのはやっぱり、山際瑠偉だった。  おしゃれイケメンだと思っていたけど、この世界じゃ、普通だな、普通。  そして、相変わらず性格は最悪な感じだった。 「王太子殿下  ルイ・ヤマギワです。  宜しくお願いします。  で、その豚を始末すれば良いですか?」 「いや、この子は私の可愛い子だから、指一本触れないで頂こう。」  僕でも背中がビリビリするくらいの威圧を感じた。 「マジか!  はっ!豚を可愛いとか、目ぇ腐ってんじゃねーの?  豚だぜ、豚!  最後は物凄いデブになる上に汚くね?」 「私の伴侶を愚弄するか、勇者モドキよ」  キラッキラから、ザワザワと髪やらが逆立って、姿が全身毛に覆われたライオンに変わった。  獣人族ですか。  体は人間だけど、見えるとこは毛に覆われて顔はライオンだった。
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