思い出。

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「これからもよろしく!」 あの日、彼女は笑いながら僕に言った。 僕も、彼女とは長い付き合いでいたいと思った。 あの日、あの時の間違いない本音。 なんてことはない。 少しずつ、少しずつ。 すれ違って、嫌になって。 関わらなくなってしまった。 学校で出会っても、話しかけなくなった。 学校で出会うことがなくなった。 卒業して、関わらなくなってしまった。 あの日の僕は、彼女をどう思っていただろうか。 すっかり遠い思い出になってしまった。 笑顔が素敵な人だった。 ……今では、その顔すら思い出せない。 「こちらこそ。これからもよろしく!」 あの日の自分はそう言った。 相手と深く関わる内に。 色んなことを知ってしまって。 自分も彼女も不安定だった。 何度も傷つけた。 何度も傷ついた。 その度に、仲直りしていたっけ。 フォトアプリに一枚残る写真。 懐かしいなと思うけど。 それでも。 あの頃の青春が戻ってくることはない。 ふと、9月の秋空を見上げた仕事帰り。 あの頃の彼女は、僕をどう思っただろうか。 今の自分は、彼女をどう思っているだろうか。 「私もそろそろ就職だしさー 忙しくなってくるし……」 高3の夏、彼女の言葉。 同じ方向の電車に乗って、 二人で帰る最中。 彼女は、進学ではなく就職を選ぶらしい。 理由はお金がないとかだったっけ。 僕は教師を夢に見て、大学に進学した。 その時、僕がどう言ったかは覚えていないけど。 僕は、夢を叶えて教師になった。 そこからしばらしくて。 風の便りで、 彼女は県外に就職したらしいと聞いた。 分かってはいたが、もう会うことはないんだろう。 少し寂しいけれど。 僕は前に進む。 「……凄いな。そんな夢があるって。」 いつの言葉だったんだろうか。 思い出に蓋をしているからか、 完全に忘れてしまっている。 消えきらない彼女との思い出の切れ端。 言葉だけは、忘れらなかった。 「二人で、背負っていこう。」 「ごめんね。でも、私も辛いんだ。」 お互いに、たくさんメールをした。 たくさんの話をした。 色んな言葉が、心に響いている。 どうしようもなく真面目で。 他人のことばっかり気にして。 自分のことを後回しにして。 僕に、少し似ていた彼女が。 あの日の僕は、気になっていたんだろう。 まるで自分を助けるように。 その人の支えになりたかったんだろう。 喫煙所にはいる。 息をつくように。 タバコを吸って、吐いた。 (……ああ、そういえば。そうだ。) 彼女のように苦しむ学生を救うために。 僕は、教師を志したんだ。
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