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「おい、お前見ただろう…誰にもいうなよ。言ったらフォーマン伯爵家がどうなるか位わかるよな…?」と笑みを浮かべ、壁は迫り来る
逃げようとしたけど、そこは狭くて、すぐ壁際に追い詰められてしまったことを後悔した
「黙ってます!黙ってますからっ!」
(もう、なんでこんなことにっ〜!!)つい先ほどまでの自分を殴ってでも止めてやりたくなった
***
それなりに豊かなフォーマン伯爵家の長女として生まれ、何不自由なく育ってきた
兄であるイーザックは優しく兄妹喧嘩なんてしたことがないほどだ
伯爵家は兄が継ぐので、兄が家を継いだ際に礎となるよう名家へ嫁ぐのが女の役目だ。
しかし、家族は「サラには幸せな結婚をしてほしい」と自由なので、18歳の今まで自由の身だ
女は学なんていらないというが、時には夫の支えとなるよう勉学にも励むべきだと思い、王宮の書庫へよく行くようになった
その際、人がいないという第三書庫へ向かった。読まれることが少なくなった本の置き場と聞き、どんな本があるのかという好奇心からだった
誰もいないと聞いていたのに、聞こえたのはペンの走る音
(誰かしら?)そう不思議に思い、音を立てないようこっそりと近づいていく
いたのは政務をしないで遊ぶほうけているクズと有名な王弟セオドアがいた
(っ!?何をしているのからし…?)
クズと有名な彼が何故、こんな場所にいるのか、何をしているのか気になり、バレないように見てみると、そこには、ファブザー地方の冷害について書かれていた書類だった。セオドアはその対処法などを書いていたのだ
(ファブザー地方といえば、農作物が有名と聞いていたけど、近年は冷害で産出量が少ないと聞くわね…)
対処法は、一時の対策として、味は落ちてしまうけど、乾燥野菜の使用を使用すること。
深水管理…冷たい水を直接入れないこと。迂回水路や溜池を通すことで太陽熱で温められ、低温を防げるなど。
(すごいわ。え?他にも書類が?)
チュルデン地方の災害の対応では、被害を受けていない地域から援助や国庫を開くこと。復旧作業はチュルデン地方のものを優先に雇うようにすることが書かれており、その理由は災害にあったものの経済力は下がり、スラムに身を置くようにならないよう国で雇うことで給与も安定され、数ヶ月後には元の生活に戻ることができるだろうということ
(そんなこと思いつくなら、全然クズじゃないわ。国民のことをよく思っていてくれることがわかる。なぜ、彼はクズ王弟なんて言われるようになったのかしら…)と観察していると、セオドアと目があってしまった
「あっ、」そう思わず声をこぼしてしまった
「何をしている…」と怒りを滲ませた瞳で睨みつけられる
「あ、いえ、違いますわ…」そう言い、一刻も早く逃げ出そうとしたが、一瞬で追い詰められ、壁際まで追い詰められてしまう
(に、逃げられないわ……)
そう、こうして
「おい、お前見ただろう…誰にもいうなよ。言ったらフォーマン伯爵家がどうなるか位わかるよな…?」と脅されてしまったのだった
「黙ってます!黙ってますからっ!」
(というか、なんで私の名前を知っているのよ〜!!)
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