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滑らかなリード思わず感嘆の息を吐いてしまった
「なんだ」
「いえ、今までで踊った方よりリードが上手くて、踊りやすくて…驚きました。」と素直に感想を口にすると、セオドアの顔は微かに赤くなっていた
(お酒でも飲んだのかしら…?)などと失礼なことを思い浮かべてしまった
「まぁ、王族教育を受けていたからな。他の子息より劣っているとは思わない」
「そうですか。」
テラスから漏れ聞こえる音楽だけで踊るとは不思議なものだ。けど、今まで踊った中で一番楽しいと思った
「終わったようだな。」音楽は止まり、作法通り挨拶をする
「ありがとうございました。」とカーテシーをする。
「あぁ、この後どうするんだ?」
「嫌ですが…戻るしかないでしょう?帰ってもいいのかもしれませんが来て早々帰るのもねぇ…」
「………なぁ、一応俺は王弟であるだろ?令嬢が群がってくるんだ」
「はぁ…?」
突然の自慢?になんて返事をすればいいのか分からない
「お前も令息に群がられて迷惑だろ?この夜会では一番権力が高い俺といたらダンスには誘いづらいだろうし、俺もエスコートしているから、と断る口実ができる…だから一緒に戻らないか?」といかにも名案だという顔で提案される
「確かに最高ですね!男性ちょっと苦手なんですよねぇ…話聞かないし、名前で呼んでくるし。」
「そうなのか、それは大変だな…?」と不思議そうな顔をしている
「まぁ、最高の組み合わせとなるだろうな…!!」と笑うセオドアの顔はまるで魔王のようだった
「うふふふ…」その隣で笑うサラは魔王軍の女幹部のようだ
「まぁ、王弟を防波堤に使うのは失礼な気がしますけどね」
「…一応、理解はしているんだな。まぁ、俺もお前を防波堤として使うのだからどっちもどっちだろう」
「そうですね…というか、お前じゃないですよ!失礼ですね!家の名前は覚えているのにお前とか…」
お前と呼ばれ、なんだか頭に来てしまった
“サラ”という大切名前があるのだ
「すまない。フォーマン嬢、……いや、サラ嬢?」
「っ……、はい。」と微笑む
名前で呼ばれても不快感は感じなかった
なんなら嬉しく感じたほどだ
何も反応しないサラに不安を感じたようでセオドアは不反そうな顔をした
「なんだ、嫌なのか?」
「いえ、……なんだか嬉しく感じてしまって……なんででしょう…?」
訳がわからなくて、嬉しくて、などと感情がごった混ぜになった
セオドアを見つめる瞳は少々潤んでおり、頬を赤くなっている
「っ……!」
セオドアはサラの顔を直視できなくなり顔を逸らした
(な、なんだっ!?)
早鐘をうつ心臓の上を握り落ち着かせようとするがうまくいかない
(な、なんなんだ…!!)
顔の赤みが落ち着いたのは10分ほどかかった
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