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「誰だ?」と兄がドアを開けてくれた
「あ、お兄様」と声をかけると、
「っ…、サラか…」と拍子抜けたような表情になった
「あの、先ほど怒鳴り声が聞こえたのですが…何かあったのですか?」と恐る恐る質問すると、兄は父の方を見た
父は首を振り、私に教えるなと言いたいのだろうと察した
「大丈夫だ。サラが心配することではない、」と微笑んだ。いつもの優しい風貌にはクマがあり、相当疲労していることがわかる
「そう、ですか…」そう言われてしまえば引き下がるしかない。
政治に関われない女であることを憎むしかなかった。
「これ、軽食や紅茶です。お腹が減っては何もできませんから。」
悲しい感情を隠すよう微笑み、足早に退室した
(女であるから政治には参加できない…あぁ、なんて辛いの。家族を支えられたらいいのに…)
なぜだか無性に王弟であるセオドアに会いたくなったのだった
第三書庫で兄の政務を担っていた。きっと彼自身の政務もあるだろうに。兄の、家族の支えと慣れているセオドアを羨ましく思った
(まぁ、国王陛下は好きじゃないけど…)
***
「サラ、すまない…」
イーザックは妹が出て行ったドアを見つめることしかできなかった。
「仕方ないだろう…まだあの子に悟らせてはいけない」
「ですがっ、あの突き放すような言い方は……」
妹の傷ついた表情が脳裏に張り付き、消えず申し訳なく思った
「アーレンデリル家からの婚約打診。それも王印付きで……」
王印付きということは婚約打診と言っておきながら王命と変わらないのだ。
(断ればくもない、王印がついていたとしてもあくまで打診だからだ……しかし、)
他家に頼ろうともアーレンデリル家が手を回し、フォーマン家に援助させないつもりだろう
婚約者であるジブリールの家を頼ることはできるかもしれないが、アーレンデリル家が何するか分かったものではない
「はぁ、どうしたものか…」と父の大きなため息が聞こえた
「サラは伯爵令嬢なのだ。いずれにせよ政略結婚の可能性も理解しているはずだ。だがなぁ…アーレンデリル家は…」と父が紡ごうとした言葉がわかった
「狙ってきているから、承諾できないと?」
「あぁ。この災害もアーレンデリル家のせいでと疑ってしまいそうだ…だが、アーレンデリルの子息はサラを好いているのだろ?不幸な結婚にはならないと思うが…」
伯爵家当主として、サラの父親として、どちらが正しいのかわからなかった
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