無関心な彼女

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中心街から少し外れた所にあるどこにでもあるような大きさのコンビニ。 それが私にバイト先だ。 家と学校の中間地点に位置するそこは同級生も近所の人も来ないし、街中のコンビニに比べたら客足は少ないが潰れそうな訳でもない、絶妙で最適なバイト先である。 そんなコンビニバイトをする中で私はお客さんを考察するのがささやかな趣味になっていた。 店員に横柄な態度をとるあの人は日頃から誰かに馬鹿にされているという劣等感を持っていてその反動が出ているんだろうな だとか 逆に店員への配慮が行きすぎているあの人は同じような接客業を経験していて尚且つクレーマーで悩まされた事があるんだろうな だとか コンビニで買い物をするという比較的短い時間、少ない動作でもそこそこ長く見ているとお客さんそれぞれの人間性や生い立ちのようなものがうかがえる。 しかし、最近どんな人なのか読めないお客さんが来るようになった。 年齢は私と同じくらいの女子高生で、制服を見るに隣町の高校のようだ。 いつも飲み物やお菓子なんかをひとつだけ買っていき、店員に対して笑顔で「お願いします」「ありがとうございます」をきちんと言うような神様のような態度の良客である。 そんな子なら育ちも良くて心優しい子なんだろうと思う所だが、私はどうしても違和感を感じて仕方がなかった。 良い子には変わりないのだが、何というか「良い子」の態度が完璧すぎて人間味を感じないのだ。人間ならばその日の出来事によって感情の変化はあるもので、その感情はなんだかんだ言って顔や態度に出てしまう。しかし彼女にはそういった変化が一切なかったのだ。 全く変化の無い日常を送っているのか? 実はロボットなんじゃないか? そんな馬鹿なことまで考えてしまうレベルだった。 そんな逆に何の特徴もない彼女に私は興味を持ってしまい、彼女が来たら自然と目で追ってしまうようになってしまった。 そして彼女を観察し考察する中で、私はある結論に至った。 彼女は全ての物事について無関心なのである。 無関心が故に世間一般的に良いとされる人間像を完璧に演じて不自然な言動を取らないようにしているのである。 もちろんこれは私の憶測に過ぎない。しかし彼女と言う人間に対して一番納得のいく解釈であった。 実際の真相は分からないし、解明する必要もない。単なる私のバイト中の暇つぶしなのだから。 その日から私は彼女に「無関心な彼女」というあだ名をつけた。
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