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「レコーダー、キャリアレコーディングをよろしく」
準備完了、レコーディングオン。
黒雲の空に覆われた大地に灰色の雨が降り注ぐ。
カンカンとアームドスーツを叩くかすかな雨音と、近くに落ちた電磁パルス弾の爆発音が交互に耳の中でこだまして、その不規則なリズムにキルアは苛立ちを感じていた。
塹壕に身を潜め、その音が鳴り止む瞬間をじっと待っていた。
「レコーダー。いちいち状況を細かく報告するのをやめてくれないか、気が散る」
私はレコーダー、兵士の活動状況を細かく記録するのが仕事である。
傭兵には必ず一人一台レコーダーが支給され、その戦績データを記録する義務がある。
一瞬静けさが訪れるが、耳を澄ますと次の大雨の襲来を予告するかのような雷鳴だけが不気味に響いていた。
――第三十五小隊、ブライドマームドチーム突撃開始
内蔵型エコースピーカーから発せられたノイズのかかった小隊長の攻撃命令が、アームドスーツの中で反響した。
ブライドマームドの傭兵たちが一斉に塹壕を駆け上がり、最前線境界に向けて出撃する。
キルアはシングルアームドチームに所属するため、後発となる。
敵国のアーマノイドとの交戦状況がレティナディスプレイに表示される。
大半の敵兵が一掃され、戦況が優勢になったところで第二波攻撃の命令が下された。
――シングルアームドチーム、突撃開始
キルアは立ち上がると、背部に装備されたジャンプバーナーを噴射し、一気に塹壕を飛び越え荒涼とした砂漠に着地する。
脚部のキャタピラを起動すると、砂塵を撒き上げながら前方の敵アーマノイドめがけて突進する。
激しい銃撃戦となるが、強化された防弾装甲兵同士ではあまり意味をなさない。結果として近接用武器を使用した白兵戦となる。
敵の顔が見えてきた、碧眼の銀髪女性。彼女は表情を変えることなくキルアに向けて、レーザーナイフを振りかざす。
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