戦場のブライド

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「君はなぜ俺の事を……心配してくれる? 左腕が、吹っ飛んじまって、エンゲージリンクも、失った。もうマスターではない、はずだ」 「私は人命救助のために情緒機能も組み込まれた自律型アーマノイドです。しかし戦闘用としては欠陥があったため、処分されそうになったところを一人の傭兵に助けられました」 「それが、前の……マスターか。愛して……いたのか?」 「あなたに感じているものと同じでした。もしそれをそう呼ぶのであれば、そうだったのでしょう」 「遠回しだな……。愛か、俺は……家庭、というものを、作ってみたかった。でもこれで、終わりだ。ちくしょう、一度結婚、というものを……してみたかったな」 「少し待っていてください」  ルーシーは窓の近くに赴き、煤けたレースカーテンを破るとそれをウェディングベールのように頭に被せ、半壊した顔を隠した。 「どうでしょう? これで花嫁らしくなりましたか?」 「ああ、綺麗だ。そうか……ここは教会だったな、レコーダー……悪いが神父役をやって、くれないか?」  そうですね、最後の望みを叶えましょうか。ただし時間も残り少ないだろうから、短縮形としましょうか。  それではルーシー、キルア、  あなた方は病める時も、健やかなる時も、  愛を持って、互いを支え合うことを誓いますか? 「誓います」 「誓い……ます」  それでは契りの口づけを。  ルーシーは床に倒れるキルアに顔を近づけると、そっと唇を重ねた。   「レコーダー、ありがとう。これで心置きなく眠ることが……できる。俺の代わりに、ルーシーの事を——」  ルーシーの壊れた頭部から漏れたオイルの雫が、キルアの頬に垂れて落ちた。
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