28人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「君はなぜ俺の事を……心配してくれる? 左腕が、吹っ飛んじまって、エンゲージリンクも、失った。もうマスターではない、はずだ」
「私は人命救助のために情緒機能も組み込まれた自律型アーマノイドです。しかし戦闘用としては欠陥があったため、処分されそうになったところを一人の傭兵に助けられました」
「それが、前の……マスターか。愛して……いたのか?」
「あなたに感じているものと同じでした。もしそれをそう呼ぶのであれば、そうだったのでしょう」
「遠回しだな……。愛か、俺は……家庭、というものを、作ってみたかった。でもこれで、終わりだ。ちくしょう、一度結婚、というものを……してみたかったな」
「少し待っていてください」
ルーシーは窓の近くに赴き、煤けたレースカーテンを破るとそれをウェディングベールのように頭に被せ、半壊した顔を隠した。
「どうでしょう? これで花嫁らしくなりましたか?」
「ああ、綺麗だ。そうか……ここは教会だったな、レコーダー……悪いが神父役をやって、くれないか?」
そうですね、最後の望みを叶えましょうか。ただし時間も残り少ないだろうから、短縮形としましょうか。
それではルーシー、キルア、
あなた方は病める時も、健やかなる時も、
愛を持って、互いを支え合うことを誓いますか?
「誓います」
「誓い……ます」
それでは契りの口づけを。
ルーシーは床に倒れるキルアに顔を近づけると、そっと唇を重ねた。
「レコーダー、ありがとう。これで心置きなく眠ることが……できる。俺の代わりに、ルーシーの事を——」
ルーシーの壊れた頭部から漏れたオイルの雫が、キルアの頬に垂れて落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!