戦場のブライド

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 キルアがさらに奥の部屋に案内されると、そこに一体の機械人形が暗闇の中に鎮座していた。 「中古ですが性能は抜群、一度も損傷したことがない逸品です」  黄金色の髪に長い銀色のまつ毛、艶のある唇。とても美しいがどこか寂しい印象。そしてキルアに嫌な記憶が蘇ってくる。  キルアはその機械人形の後ろに回り、首筋にある製品型番を確認した。 「LC66609、通称LUCIFER(ルシファー)……やはり。これは敵国のアーマノイドだろう?」 「そうです、マスターの命令に従うようブライドアームドに改良されたものです。その代わり、お値段は格安で提供します。これ一体しかないので決断するなら今ですよ」 「堕天使……この機体には因縁がある。わかった、これを購入しよう。こいつには色々聞きたいこともある」 「ありがとうございます」  ニヤリと品のない笑みを浮かべると、店長は銀色の指輪をキルアに手渡した。 「エンゲージリンクです、これを指にはめてください。この指輪の所有者の指示に従います」  キルアが指輪を薬指にはめ、指で撫でると緑色の丸ライトが点灯した。  そのライトと連動して機械人形は息を吹き返したようにゆっくりと目を開き、ロングスカートに施されたブルーライトのラインを妖しく鼓動させた。 「はじめまして、マスター。ルーシーとお呼びください」  ゆっくりと膝を落とし、お辞儀をする様はどこか気品があり、(おごそ)かな儀式を執り行っているかのような錯覚に(おちい)らせる。  ルーシーは顔を上げると、銀色の大きな瞳でキルアをじっと見つめた。  キルアは呆然としていたが、はっと我に返り、視線を逸らしながら話しかけた。 「キルア・レイモンドだ。これからブライドアームドとしてアシストしてもらう」 「かしこまりました。あなたのパートナーです、なんなりとお申しつけください」 「……前のマスターはどうした?」 「戦死しました」 「マスターを守り切れなかったということか?」 「いえ、私を助けようとして犠牲となりました」 「それはどういうことだ?」  キルアがルーシーに問いかけると、店長が横やりを入れてきた。 「たまにいるんですよ。ブライドに情が移って守ろうとする奴が。そりゃあ、これだけ綺麗だったらねえ」 「俺は戦場に色事は持ち込まない、ましてやこいつなんかに……」
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