戦場のブライド

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 複数の黒煙が立ち昇る戦場が見えてきた。 「ここの土地勘はある、もうすぐ市街地が見えてくるはずだが——」 「前方に地雷原を検知しました。緊急回避します」  ルーシーはキルアを抱き抱えると、リニアバイクから飛び降りた。転がり落ちた二人は勢いで草むらにその身を投げ出した。  リニアバイクが動体感知地雷に反応すると爆炎が舞い上がり、大破した車体の破片がキルアの顔をかすめ、ドロリとした赤い血を頬から垂らした。インスタントスキンを取り出すと、急いでその傷口を塞いだ。  続け様にプラズマミサイルが着弾し、後続のバイクは紫炎の電磁嵐(でんじらん)に焼かれた。  波状攻撃に対抗すべく、後方支援部隊からの迎撃ミサイルの白煙が空にストライプを描き始めた。 「悪い、油断した。よし突撃するぞ、ルーシー。武器を装備しろ」 「承知しました」  ルーシーは二刀の大型レーザーソードを構え、ロングスカートのラインをブルーからレッドに変化させると、それはまるで赤い翼を生やした堕天使のような威圧感を発した。    前方からアーマノイドが三体、二人に向かって迫ってきていた。  銃撃で応戦するが鋼鉄のガウンシールドに弾き返され、一機が飛び上がるとビームナックルをはめた腕をキルア目掛けて振り落としてきた。  しかし次の瞬間、その腕はキルアの視界から消え、どさりと地面に落下した。その横には腕を一刀両断したルーシーがいた。  間髪入れず、残りの二体もキルアに襲いかかるが、ルーシーはそれらの頭と胸に刀を突き刺し、抉ぐるように引き抜くと、オイルの飛沫が彼女を濡らした。 「大丈夫ですか? マスター」  整然とした表情でルーシーはキルアに問いかける。 「ああ、おかげで助かった……後ろ!」  片腕を失くしたアーマノイドがルーシーの背後でレーザーナイフを構えていたが、キルアがコアユニットに銃弾を命中させると、崩れるように膝を地面につけた。 「ありがとうございます」 「礼を言われる覚えはない、これは仕事だ」
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