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すると龍一は、
「ぐだぐだ言ってないで、もう黙って家に入れ。美百合の茶が冷めるぞ」
なんて驚くべきことを言って、再び顎を傾け誘ってきた。
どうやら本気で言っているらしい。
あの有坂龍一が、ミスを見逃すということだろううか。
本当だろうか、信じて大丈夫なのか。
いや、龍一はそんな甘い男ではないはずだ。
やはり、ライはこれから、ひと知れず殺される運命なのか。
と葛藤するライに、龍一は、うんざりだとため息をついてみせた。
「確かに、俺はお前を許したわけではない」
やはり、抹殺されるルートだ!
飛び上がって逃げようとするライの首根っこを、龍一は右腕一本で捕まえた。
体ごと引き寄せ、耳元に顔を近づけたかと思うと、イヤに色っぽい声でささやく。
「許したわけではないが人員不足だ。美百合のパンツに触れて生かしておける人間は、今のところ女性であるキミしかいない」
「!」
「その一点だけで、俺はキミを認めよう。ライ、キミなら、美百合と一緒に買い物デートをしても洗濯デートをしても許す」
力が抜けて、その場に座り込みそうになった。
とりあえず命は助かったが、ただの家事をデートと言い切る龍一に、呆れてものが言えない。
なんて心の狭い男だ。
そして、なんて嫉妬深い男なんだ。
もしもそんな風に突っ込んだら、今度こそ間違いなく殺されるんだろうな、と思いながら、ライは、龍一が開けてくれた玄関のドアを黙ってくぐった。
ーー了ーー
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