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ライの逃亡
無表情の有坂龍一に、一定ペースで追いかけられる。
世の中にこんな恐ろしいことがあるだろうか。
逃げながらも、どこか呑気にそんなことを考えているのは小山内ライ、24歳である。
組織内では109番と呼ばれている。
事件はライが有坂家の護衛任務についた初日に起こった。
この護衛任務に選ばれるのは、将来を期待された若きエリートたちだ。
だからライも、誇りと責任をもって、期待に胸ふくらませて任務についた。
だが、109番という呼ばれ方からも察せられるとおり、ライの前に108人ものエリートが、この任務をクビになってきたという過去がある。
有坂邸の護衛。
これがただの護衛任務と思いきや、任務中に行方不明になった者、そして命を落とした者までいる。
これほどの犠牲を強いられるような過酷な護衛など、日本では他に聞いたことがない。
ただし、そういう極端な悲劇に見舞われた者は指で数えられるほどで、ほとんどの者がクビになった理由は、有坂龍一である。
彼があっさりとクビを言い渡した。
有坂邸の護衛任務につくにあたり、決められた掟は以下のとおりである。
1,有坂美百合に気づかれてはならない。
2,有坂美百合に怪我をさせてはならない。
そして、
3,有坂龍一を怒らせてはならない。
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