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龍一は、
「お前が盗ったのか?」
と敵に聞いた。
聞いたクセに、男が何か答える時間を与えず、いきなり頬を殴り飛ばした。
敵は一発で意識を刈り取られてしまった。
龍一はぐったりした男を見下ろすと、
「返答なしは、認めたものと判断する」
なんて無情なことを言う。
無茶苦茶だ。
そういえば有坂龍一は拷問のエキスパートだといわれていることを思い出していると、
「お前も仲間か?」
とライを振り返ってきた。
まさか、警備チームの、しかも警護要因であるライの顔を覚えていないはずはない、と焦りながら、
「ち、違いますよ」
と慌てて答えると、
「わかってる。冗談だ」
と龍一は真顔のままで言う。
「……」
これが噂に聞く、龍一の笑えない冗談なのかと冷や汗をかいていると、
「ああ、盗まれたのがパンツだから、二発のパンチは欲しいと考えていた」
龍一は全身汗みずくになるライに、怪訝な顔をして続けた。
「ん? わからないか? パンチがツーでパンツーー」
「パンツは私が所持しています」
ペロッと白状してしまった。
なるほど。
これが噂に聞く、誰もが口を割らずにいられない、有坂龍一の拷問術なのか。
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