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ところが、龍一がスタスタと、追いかけてくる。
いや、美百合のパンツを持っていると白状してしまったのだから、追いかけられて当たり前だが、でも、その追いかけ方が怖いのだ。
ライは必死になって走っている。
龍一は歩いている。
そう、こっちは走って、あっちは歩いているのに、一向に距離が広がらないのは何故だ。
それに、普通ならここで、「待て」とか「止まれ」とか言うのではないだろうか。
だけど龍一は声を発しない。
ただ無表情で淡々と、一定の距離を保ったまま追いかけてくる。
逃げておいて勝手だが、もしも龍一が止まれと言ってくれたら、
「はい。止まりますから、撃たないでください」
とライも即座にホールドアップする。
だけど試しに、
「有坂さん、あのーー」
呼びかけて振り返ってみたら、龍一は真顔のまま、ズンズンと距離を詰めてきた。
思わず、走る速度をあげてしまった。
怖い。
「わかった」とも「了承した」とも言ってくれない龍一が怖い。
もしやこのまま、組織2人目の殉職者にされるのではないか。
そんな不安がどうしても拭えない。
今の有坂龍一には、言葉がまったく通じない気がする。
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