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護衛対象の有坂美百合に、護衛していることを気づかれてはならない。
これが、なかなか難しい。
なにせ美百合がひどく目ざとい。
「ねえ、ちょっと休憩にしない?」
息を潜めて監視していたのに、いきなりそんな風に美百合に背中を叩かれたり、または差し入れを貰ってしまった。
これでクビになった者が74人。
残りの30人は、美百合に怪我をさせてクビになった。
護衛対象に怪我をさせるなど、護衛としては失格の烙印を押されても仕方ないのだが、でも怪我の度合いの話もある。
美百合が料理中に包丁で手を切った、これで18人がクビ。
転んで膝をすりむいた、これで10人がクビ。
残りのふたりは、野良猫を触ろうとした美百合が手を引っかかれたのだ。
これでクビ。
理不尽極まりない。
護衛任務についた者は、とにかく美百合に怪我をさせてはならない。
たとえ護衛に過失がなくても、それは絶対条件なのだ。
そういう話を、耳にタコが出来るくらい聞かされてきたライだから、美百合が外出の格好をして外に出てきた瞬間、全身に緊張を走らせた。
美百合がひとりで行動する時は、普通に危険だ。
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