物騒な追いかけっこ

楽しい楽しいカーチェイス

それから、あの介抱スリの男だ。
あいつの命運も、これで尽きた。

龍一の怒りを買って、これまで生き残ったっている者など、ライは知らない。
そしてこのままでは、ライも。
最悪の予感に震え上がりながら、ライは、いきおいよく対向車線に走ってきた大型トラックの前に飛び出した。

「何やってんだテメー。危ねえだろうが」
気の荒い運転手が、窓を開けて怒鳴りかかってくる。
しかしライは、車を止めてくれてラッキーと、運転手の首根っこを掴むと、グイと外に引きずり出した。
「おいお前、何をーー」
ライの見かけとは裏腹に、いやに簡単に車外に転がり出されて、運転手はわけがわからないといった顔をしている。
まるでマジックでも見せられたように、ポカンと口を開けた。

だけど、そんな運転手に声ひとつかけてやることなく、ライは運転手に代わってトラックに乗り込んだ。
思い切りアクセルを踏み込む。

まっすぐ一本道の農道に障害物はない。
そこを猛スピードで爆走する大型トラックは、何台もの車に追いつき、それらを追い越していった。
だけどサイドミラーにチラリと影が見える。
黒い車だ。
そして、そんな車がどんどんと増えてきた。