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ライは、右折できる交差点まで下がると、ギアをドライブに入れ替え、そちらにハンドルを切った。
だけど今度は、進行方向にひょっこりと軽トラックが顔を出した。
これまでの怪しげな高級車と違って、こっちは罪のない一般車両に決まっている。
ぶつかるわけにはいなかいと、ブレーキを目一杯踏み込んだ。
シートベルトで強打した胸の痛みを堪えながら目を開けると、ぎりぎりで止まった軽トラックの助手席から、
「ヤッホー」
と女性がのんきな顔で手を振ってきた。
美百合だ。
そして、軽トラックの運転席にいるのは、当然、有坂龍一。
『なんでここに』
いつの間に先回りされていたのかと、ぞっとする。
あの軽トラックには、衛生追尾システムでも装備されているのか。
だがライには驚いている暇もない。
黒塗り高級車の群列が背後に迫ってきた。
このままでは挟み撃ちだ!
と、龍一がハンドルを操作して、ライのトラックが通れるだけの隙間を空けてくれる。
『逃がしてくれるのか? なんで?』
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