10人が本棚に入れています
本棚に追加
だがそんな男を、
「具合が悪くなった」
なんて心配するなど、
『やっぱり美百合は心根が優しい』
と改めて惚れ直してしまう。
龍一は、基本、他人の心配など無駄なことはしない。
だが同時に、美百合が他の男を気にかけるのは許せない。
心が狭いと言われようが、こればかりは許せないのだ。
それで、
「大丈夫だ。安心して眠っているだけだろう」
と言ってやると、
「安心してる?」
美百合は納得できないと唇を尖らせた。
「あんなにお尻をあげた変な格好で?」
「あれがあいつのリラックスポーズなんだろう」
「頭を抱えて震えているように見えるけど?」
「夢でもみてるんじゃないか」
何を言っても聞き入れない龍一に、
「とにかく、お医者さまにみせる必要があると思うの」
美百合は鼻息荒く言った。
「病院に連れていってあげるべきよ」
しかし龍一は、
「俺は一通りの医療技術を学んでいる」
冷たく言い放つ。
「その俺が、大丈夫だと言っているんだぞ」
一変して、不安定に揺れる眼差しを美百合に向けた。
「俺の言うことが信用できないのか?」
最初のコメントを投稿しよう!