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護衛対象がひとりで外出する。
通常ならあり得ないことだが、美百合はとりあえずは一般人だ。
行動を制限することは出来ない。
「いっそ外になんか出さず、一生家に閉じこもっていてくれればいいと思ったぜ」
前任者が嘆く口調で言っていたのを思い出す。
「対象はとんでもないトラブル体質だからな」
ひどく大げさなことを言うなと思っていたが、そんなライの期待は、美百合が歩き出して15分で裏切られた。
美百合の前で、外国人の男が崩れるように倒れたのだ。
「大丈夫ですか!」
美百合は心配そうに駆け寄っていく。
だがライにはわかった。
あれは日本人の親切さにつけ込んだ、介抱スリの手口だ。
親切にも近づいてきた人間のサイフをかすめ取る。
『どこからあんなコソ泥が入り込んだ』
ライは舌打ちしたい気分で前に出ていった。
「Hi Stephen. Are you OK?」
外国人の男に声をかけながら、美百合のカバンに手を伸ばそうとした腕をとっさに掴む。
『やっぱりだ!』
美百合を振り返って日本語で言ってやった。
「心配ありがとうございます。後は私が見ますので大丈夫です」
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