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「そんなにあの男のことが気になるのか?」
尊大、傲慢、傍若無人という言葉こそが相応しいあの有坂龍一が、美百合の前だけでする自信のなさそうな顔。
龍一のイケメン面には慣れているはずの美百合でさえ、キュンと胸がたかなった。
切なげな龍一の問いにも、
「え……、そんなことはないけど……」
思わず、そう答えてしまう。
すると龍一は、あからさまにほっと息をついてみせ、
「ならいい。美百合には、一生俺だけを見ていてほしいからな」
なんて甘いセリフをためらいなくささやいた。
美百合は頬を真っ赤に染めて、
「……もう龍一ってば、こんなところで、そんなこと言わないでいいよ」
もじもじと体を揺らし、龍一も、
「別にいいだろう。他に誰もいないんだから」
なんてまんざらでもない様子だが、ちなみに軽トラックの荷台にはスリの男が乗っているし、ふたりの会話は、しっかりと警備隊本部が盗聴している。
町中で銃撃戦を繰り広げるような軽トラックを、警備本部のチームがモニターしていないわけはないのだ。
もちろん、龍一はこのことを承知しているし、美百合は何も知らない。
あっという間に始まったイチャイチャタイムに、とにかく全員、ひどく居心地の悪い気分を味あわされた。
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