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有坂龍一に警護されるほど、この世に安全な場所はない。
だがしかし、その警護の目を掻い潜り、とんでもないことをしでかすのが美百合なのだ。
「今回は、こちらの通信をロシア側が傍受しているとの情報が入った。どうにかして、やつらをおびき出す必要があったところに、このトラブルだ。まあ、お陰で一網打尽にできたのだから、終わりよければすべてよし、だったな」
「はあ!?」
素っ頓狂な声が出てしまった。
有坂龍一を前にして、思いきり顔をしかめてしまう。
こちとら、死ぬ目に合うほど追いかけ回されて、仕事までクビ確定だというのに、『終わりよければ』なんて、とても言える心境じゃない。
でもそういえば、ことの始まりは、龍一自身が本部に入れた通信だった。
「美百合の私物が盗まれた。すぐに犯人を特定し、拘束、拷問にかけろ!」
あれは、傍受しているロシア側に、わざと聞かせたということなのか。
敵のスパイをおびき寄せるために、わざとあんな通信を流したのか!
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