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ライがそんな風に思い返している間に、龍一は、話は終わりだと言わんばかりに背を向けて、有坂家の中に入っていこうとした。
「あ……」
ライは伸ばしかけた手を引っ込める。
任務はこれで終わりだ。
結局、この夫婦に振り回されて何も出来ず仕舞いだったが、とりあえずライは生きている。
たった一日でクビなどと、不名誉な記録を残すことになってしまったが、あの戦場から生きて帰って来られただけで僥倖だと思うことにしよう。
ライが一礼して、その場を去ろうとすると、
「どこへ行くんだ? 美百合の誘いを無視するつもりか」
龍一が振り返って、不愉快そうに聞いてきた。
そんなイヤそうな顔をするくらいなら、そっちこそ無視してくれればいいのに、と思いながら、
「あ、いえ、そんなつもりはないのですが」
仕事を失敗するような無能を家に入れるなんて、有坂龍一が許すわけがない。
ならば、ここで引き止める理由はなんだろう。
まさか、家にいれてから、夫婦ふたりして、ライに罰則を与えるつもりだろうか。
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