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いやいやいや。
美百合の方は拷問なんて、そんな物騒な趣味は持っていないはずだ。
だいたい、見ず知らずの外国人を助けようとする、親切な普通の女性だ。
今回の場合、助けない方が彼のためには良かったかもしれないが、それは結果論。
彼女は、ちょっとぶっ飛んでいるが、それでもとても優しい人だ。
だけど、いくら親切だろうと、彼女のパンツが盗まれたというライの失敗は、なかったことにはならない。
しかもライは、美百合のパンツを一時的にでも所持してしまっていたのだ。
この不埒な行為を、龍一が慈悲の心を持って許すとは思えない。
ライは再び大きく頭を下げた。
「すぐにでも帰って、己を鍛え直したいと考えます」
そうしなければ、職場復帰も危うい。
すると、
「ふーん。なかなか殊勝な心がけだ」
龍一が、どこか小馬鹿にしたように目を細めた。
「だが、美百合の傍にいる方が、いろいろと鍛えられると思うぞ」
「確かに」
思わず同調してしまってから、失言に気がつく。
龍一の眉が、派手に跳ね上がったからだ。
「すいません!」
今にも撃たれるんじゃないかとドキドキする。
ちょっとした言動が、死に直結する。
こんなに緊張する現場は、他にない。
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