追いかけっこの結末

9/10

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
いやいやいや。 美百合の方は拷問なんて、そんな物騒な趣味は持っていないはずだ。 だいたい、見ず知らずの外国人を助けようとする、親切な普通の女性だ。 今回の場合、助けない方が彼のためには良かったかもしれないが、それは結果論。 彼女は、ちょっとぶっ飛んでいるが、それでもとても優しい人だ。 だけど、いくら親切だろうと、彼女のパンツが盗まれたというライの失敗は、なかったことにはならない。 しかもライは、美百合のパンツを一時的にでも所持してしまっていたのだ。 この不埒な行為を、龍一が慈悲の心を持って許すとは思えない。 ライは再び大きく頭を下げた。 「すぐにでも帰って、己を鍛え直したいと考えます」 そうしなければ、職場復帰も危うい。 すると、 「ふーん。なかなか殊勝な心がけだ」 龍一が、どこか小馬鹿にしたように目を細めた。 「だが、美百合の傍にいる方が、いろいろと鍛えられると思うぞ」 「確かに」 思わず同調してしまってから、失言に気がつく。 龍一の眉が、派手に跳ね上がったからだ。 「すいません!」 今にも撃たれるんじゃないかとドキドキする。 ちょっとした言動が、死に直結する。 こんなに緊張する現場は、他にない。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加