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これで美百合が納得してくれれば、とりあえずの危機はなくなる。
とにかくこの場を離れようと、
「ご親切にどうも」
礼を言って、男に肩を貸して立ち上がった。
美百合と接触してしまったせいで、明日からはこの顔ではいられなくなった。
まあ、もともと3日に一回は人相風体を変える予定だったから、特に問題ない。
ところがそのとき、美百合がとんでもないことを言い出した。
「あ、でも、この辺りに病院とかないですよ。良かったらウチで休んでいきませんか」
「!」
まさか、介抱スリの男を有坂邸に連れ込むわけにはいかない。
そんなことなんかしたら、始末書で済む話ではない。
一発でクビだ!
ライは焦って首を振った。
「いえいえ、実は彼には持病がありまして、ホテルに帰って薬を飲ませれば大丈夫なんです」
しかし美百合はキョトンとした顔で言う。
「え、でも一番近くのホテルでも30キロは先でしょ。あなたたち一体どこから来たの?」
そうだった!
ここいら辺りのド田舎具合をすっかり失念していた。
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