それは突然

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それは突然

 雨がしとしと降っている六月のある日。  隣の席の小野勇太(おのゆうた)が、プリントを解きながらワイヤレスイヤホンで何かを聴いていた。水色のワイシャツとメタリックブルーの色が馴染んでいる。 「何?」  視線に気が付いたようで片耳だけ外してこっちを向く。  いけない、見すぎちゃった。 「いや、何を聴いてるのかと思って」 「んー? 好きなバンドの曲」 「授業中に音楽なんか聴いて大丈夫?」  あたしと小野は単なるクラスメイト。  仲が良いわけでも悪いわけでもない。最近あった席替えで隣同士になっただけの関係。  この時間は急遽自習になったんだけど、先生がいなくなった途端イヤホンを耳に付け、堂々と何かを聴き始めたのだった。  真面目なタイプだと思ってたから意外で、つい見てしまった。 「先生いないし大丈夫だろ」 「まぁ、そうなんだけどさ」  隣の教室に他の先生がいるからか教室内はわりと静か。スマホをいじってる子や、ヒソヒソとお喋りしている子、寝ている子など様々。  窓際の一番後ろの席だから、教室内の様子がよく見える。
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