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ラオにかけていた不可視の術が消えてしまった。まあいいか、と空を見る。地上からは多少騒ぐ声が聞こえるのでラオの姿を見られたようだ。もっとすごいのが来るからいいか、と放っておく。
この半年間二人でシバリはできる限り焼き払ってきた。おそらく空腹で全く力が足りていないはずだ。しかしそれでも二人で勝てる相手ではない。前回は仙人たちを利用してようやく追い払うことができただけだ。
周囲から人々の悲鳴が響き渡った。普通の人間には見えない、遠くの方まで目を凝らして見てみると突然人々が苦しみながらバタバタと倒れている。白服のもの達も、農民らも。
「なんだあれ!? 人が死んでるのか?」
「なんだも何も決まってんだろ」
苛ついた様子で符を一気に八枚、空に向かって放り投げる。符はまるで意思を持っているかのように八方位に飛んでいった。チョウカは空に向かって指をさす。
「クソ虫がうじゃうじゃしてやがる!」
その言葉と同時にチョウカの指から炎の渦が繰り出される。その炎はすべての符から全く同じものが出て、かなりの広範囲に平べったい炎の竜巻が放たれた。まるで海の渦潮のようにぐるぐると回りながら他の炎と合体して最終的には巨大な竜巻ができあがる。
うっすらと見え隠れしていたシバリはすべて燃え尽きた。ついでに死んだ者たちはそのまま炭となってしまう。
「シバリって人を弱らせてから命を奪うのに、こんなに無差別に人を死なせることある!?」
「玉の影響だな。近くにあるとシバリの力があがるんだ。シバリを利用して人の魂を食ってると思ってたが。なるほど、もともとあの虫どもはあいつの使い捨ての眷属か」
轟音とともに姿を現したのは空を覆い尽くしてしまうのではないかというくらい巨大な龍。真っ白で見た目だけはとても神々しい。その姿を見て生き残っていた人たちが地面に膝をついて祈りを捧げる。
キノクニ様だ!
キノクニ様が降臨された!
その声を聞いて二人とも鼻で笑ってしまった。
「右手くっついてんだろうが」
「人間にツッコミ入れてたらキリがないからまぁいいでしょ別に。龍に詳しい人間がいたらむしろびっくりするよ。さてと。急いで降りてきたのはやっぱり」
二人とも布で縛られた玉を見る。どう考えても間違いなく狙いはこれだ。ランカが持つ事で辛うじて拮抗が保たれていたのが、チョウカが持つことでわずかに気配があふれたのだろう。それを察知して急いで降りてきているのだ。
「第一声が返せ、ならあいつのもの。よこせだったら他人のものだな」
あたりに怒号が響いた。
「よこせええええ!!」
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