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とうとう現れたのでございます
「俺たちがシュウセン様の気がわからなかったのはガキすぎたから、だと思ってたけど。シュウセン様が持つことで陰陽の拮抗を絶妙に保っていたのだとしたら」
そう考えればすべての辻褄が合う。そう言わんばかりのチョウカの話にラオもハッとする。
「幼い俺たちを一緒に連れず常に一人で行動していたのは、俺たちを遠ざけるためだった、とか?」
「あり得るんだよな。龍は天上界が嫌いだ。それなのにお前を連れてあそこに住んでたのは地上と違って戦が少なくて安全だから。でもお前が生まれたら一緒に空を渡ったっていいじゃないか」
龍が生まれたときの大きさは本当にそれぞれ違う。最初からある程度大きい、といっても人と同じ位の丈だが。それぐらいで生まれるものもいれば、トカゲ位の大きさで生まれる龍もいる。ラオは人の手の平に収まってしまう位に小さかった。
一緒に飛ぶと気流で吹き飛ばされてしまうかもしれない。だが鬣や角にしがみついていれば、一緒に過ごすことができたはずだ。幼い頃はまったく疑問に思わず旅立つシュウセンを見送っていた。
「シュウセン様の玉は見たことないけど。絶対に普段持ち歩いていてこの玉との拮抗を調整していたはずだ。それぐらいやばいもんだからな」
陽気なのに人の魂を奪う異様な玉。存在そのものが矛盾している。一体誰が何のために作り出したのか、それはわからない。もしかしたら本当にどこかの龍の玉なのかもしれない。
「でも持ち歩く必要ある? どこか湖の中とかその辺に放っておけばいいのに」
「拮抗を利用して持っていたとなると隠したかったから。シュウセン様が持つことで初めてちょうどいい位だったんだろう。何から? 誰から隠したい?」
そこまで話して二人は顔を見合わせた。とてつもなく嫌な可能性を思いついたのだ。
「そういえばいたね、人の魂餌にしているやつ」
「シュウセン様が命をかけて戦った。なんでそんなことしたんだろうって思ったけど、なるほど」
あたりに雷鳴のような音が響く。チョウカがラオの頭の上にまたがるとラオは天井を突き破って外に出た。雲一つない快晴、それなのに空から鳴っているこの音。
「相変わらずうるせえ登場の仕方だ。音鳴らさないと出てくることができないのかよ」
「空飛ぶ時うねるからね。何かこう、関節がバキバキ言ってるんじゃない?」
「運動不足のおっさんかよ、まったく。あ、術解けた」
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