とうとう現れたのでございます

3/7
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
 お前のじゃないじゃん、というツッコミを入れる暇などない。ラオが小さく旋回すると今しがた居た場所に氷の塊が無数に吹き付けられてきた。 「目ぇ血走ってるわ、怒り狂ってるわ、前に見た時よりだいぶひどい有様になってる」 「シュウセン様がずっと隠していたとなると相当な年数探し回ってたんだろう。しかも光の届く所しか移動できないから地上に降りてきて探すこともできない。シバリが眷属なら探させてたのかもしれんが、見つからなくて苛ついてたのかもな。やだやだ、年寄りは怒りっぽくて」  話をしている間もサカナシは次々と攻撃を繰り出してくる。しかし怒りと焦りのせいなのか以前戦った時よりも狙いがあまり正確ではない。何せラオでもかわせるくらいだ。 「それは俺のだ、よこせえ!」  以前と同じ戦い方は通用しないはずだ。自分たちの力ではサカナシを倒すことができないのはわかっている。 「無駄かもしれないがやってみるか」  そうつぶやくとチョウカはラオから飛び降りてサカナシの(たてがみ)に掴まった。本来であれば雷を放つ時に鬣が白く光る。雲から雷を呼ぶ他にも、自ら雷を作ることができるからだ。しかし以前戦った時、サカナシは口から氷を吐くだけで雷を使ってこなかった。龍であれば雨、雷は使えて普通だというのに。こうして掴まっていても、振り落とそうとしてくるだけで雷を使う様子は無い。 「もしかしてお前、氷しか吐き出せないのか? 雷も炎も使えないのかよ」 「!」  返事はなかったがその反応は図星だろうというのがわかった。明らかに体がびくりと震えたからだ。 (そんなことありえるか? ラオだって使えるのに)  玉を持っていない、龍としては幼いラオ。そのラオよりも龍としての能力は下ということになってしまう。  鱗はかなり固い、それこそ鉛のようだ。これはぶん殴っても無理だなと思い再びサカナシからラオに飛び移った。そこら中に氷の粒や塊を吐き出して攻撃をしてくる。それらをラオはスイスイと避けていく。避けられることに、ラオも驚いているようだ。 「なんか前より弱くなってない?」  ラオの問いかけにチョウカも「ああ」とうなずいた。 「明らかに氷が小さくなってる。風もたいしたことない。気が立ってめちゃくちゃに攻撃してるのかと思ったが、もしかしてこれが今のあいつの精一杯なのか」
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!