アブノーマル・アイデンティティ

18/19

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「ぎぃやああああ!」  その奇想は、突拍子もないが故に払拭しがたかった。  事実は小説よりも奇なり。  そして姫宮氏は根は純粋な作家であった。  作家と妄想とは切っても切れない縁がある。  姫宮氏はついに真実の扉を開けてしまった。  真実の扉の向こうではAI作家がAI読者のために小説を量産し、AI編集者が嬉々としてそれを売りさばき、AI評論家が作品を論じていた。  AI読者はより新しくより面白いAI娯楽の作品を求め、そして人類は何が面白いのやらちんぷんかんぷんの作品データを永遠に保存するためにあくせくと電気を生産し続けた。  より質の高い電気を大量に生産する人類は上等人類、それができないものは下等人類と呼ばれて区別された。  姫宮氏は当然、下等の方に名を連ねた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加